バロック建築
バロック建築は、1590年頃から盛んになった建築様式。建築そのものだけではなく、彫刻や絵画を含めた様々な芸術活動によって空間を構成し、複雑さや多様性を示すことを特徴とします。特に内部空間の複雑な構成は、他の建築様式とは際立った特色となっています。
バロックの語源はポルトガル語のBarocco(歪んだ真珠)といわれ、元々は一部に見られるグロテスクなまでに装飾過剰で大仰な建築に対する蔑称でしたが、のちに広く17・18世紀の美術・建築に見られる傾向を指す様式概念として用いられるようになりました。
19世紀の様式氾濫期になるとバロック様式が国家建築にふさわしい様式として復興しました。
バロック建築は彫刻や調度品が建築の一部を形成するため装飾に対する嗜好性が見られ、後期にはサロン文化の隆盛に伴って、室内装飾に重点が置かれるロココと呼ばれる傾向を示すようになります。
しかし、18世紀になるとロココの繊細で洒落たデザインは軽薄で軟弱なものと批判されるようになり、
フランスでは新古典主義建築の勃興とともに衰えました。
モダニズム建築
モダニズム建築は、19世紀以前の様式建築を批判し、市民革命と産業革命以降の社会の現実に合った建築をつくろうとする近代建築運動により生まれた建築様式です。
新しい建築を求めて各国でさまざまな試行錯誤が繰り返され、国を超えて大きな運動になっていきました。モダニズム建築(近代主義建築)は、普遍性・国際性を主張しますが、いうまでもなくその表現には幅があり、「まったく同じ様式が世界中に普及した」訳ではありません。
モダニズム建築の20世紀になって突然生まれたものではありません。建築を理念によって支えるという点は新古典主義建築において萌芽したものですし、要求に則した建築を機能的に設計するというプロセスは、用途や要求などの諸要素に対応して様々な様式を採用するという19世紀の歴史主義建築の手法においてもみられる現象です。
むしろモダニズム建築は、それまでの建築思想を拡張し、再構成することによって成立したと言えます。単に装飾を省略するだけではモダニズム建築は成立しません。
18世紀後期に相対化された歴史的様式の代わりに、普遍的な「空間」の概念が導入されています。
ポストモダン建築
ポストモダン建築は、モダニズム建築への批判から提唱された建築のスタイルです。
合理的で機能主義的となった近代モダニズム建築に対し、その反動として現れた装飾性、折衷性、過剰性などの回復を目指した建築のことです。1980年代を中心に流行しました。
モダニズムは合理性、機閨E性を追求してきましたが、そのた綢に都市綸建築があまりに味気なくなってしまったのではないか、という批判から、アンチのモダニズムとしての『ポストモダニズム』建築が提唱されました。
チャールズ・ジェンクスは1960年代以降の建築を特徴づけるために援用し、この用語は有名になりました。
彼によれば、建築のポスト・モダニズムとは簡単にいえば、「ハイブリッド」(混成的)で、「ラディカルな折衷主義」を意味し、その本質は「二重のコード化」(解釈のレベルの重層化)にあるといいます。
脱構築主義建築
脱構築主義建築とは、ポストモダン建築の一派であり、1980年代後半以降、2000年代に至るまで世界の建築界を席巻しています。
脱構築主義の建築家の多くは実際の設計には恵まれず、もっぱら建築思想家として、また建つことのない建築のイメージを描いたドローイングで有名でしたが、MOMAによる『脱構築主義老EE建築』展のあと、1990年代以降は各地で実際の建築を設計するようになっています。
ポストモダンの退潮後、モダニズム建築が復権するかたわら、脱構築主義は各国でのコンペに勝利することで、スタジアムや超高層ビルなどより広い活躍の場を得るようになっています。
破片ような建築物の形状、設計過程における非線形な手法、建築物の表層・表皮に対する興味、構造や覆いといった建築の要素に歪みや混乱を起こす非ユークリッド幾何学の応用などが特徴です。
この様式で建てられた建築の最終的な外観は、伝統的な建築様式ともモダニズム建築の箱型とも違う、アンバランスで予測不可能かつ刺激的なもので、ひねられたりずらされたり傾けられたりと、コントロールされた混沌とでもいうべき様相を呈します。